HONOR ROBOT PHONE: 360度ジンバルカメラを搭載した異形のAIデバイスの全貌

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HONORが2025年10月15日にコンセプトスマートフォン「HONOR ROBOT PHONE」をティザー公開し、スマートフォン業界の常識を覆す革新的なデバイスとして大きな話題を呼んでいます。HONORはこのデバイスを、AI Phoneを経てRobot Phoneへと進化させる革命的なAIデバイスと位置づけています。HONORは、業界がiPhoneとの比較に忙しい中で、本質的な価値創造に注力すると述べており、ROBOT PHONEはHONORのAIエコシステムのフラッグシップとして位置づけられています。

1. 驚異の変形機構:360度ジンバルカメラの搭載

HONOR ROBOT PHONEの最大の特徴は、背面の巨大なカメラモジュールから360度回転するジンバルカメラアームが展開する点です。

ジンバル機構とエンジニアリングの偉業

従来のポップアップカメラやフリップカメラが単にレンズの位置を変える機構であったのに対し、ROBOT PHONEはジンバルによる動的撮影を実現しています。

  • 構造と動作 背面のカメラモジュールは縦長で、全体の約30%を占めています。外見上はさほど違和感がありませんが、起動時にガラスパネルの右半分がスライドして開き、ジンバルアームが裏から表へ回転して出てきます。
  • 回転軸と機能 このジンバルアームは上下左右のパン/チルトが可能な3軸回転軸を持っています。展開時の全長は15cmに伸び、卓上スタンドとしても機能します。収納時の厚みは9mmとスリムさが保たれます。
  • 耐久性 HONORはDJIの技術を参考に独自のブラシレスモーターを開発したとされています。耐久テストでは、10万回の展開をクリアし、故障率は0.1%未満に抑えられているとのことです。また、モーターの応答速度は0.1秒以内であり、安定性が抜群であるという情報も得られています。
  • 素材 カメラアームには軽量かつ頑丈なカーボンファイバーが使用されており、センサーはToF(Time of Flight)で距離を測り、衝突防止機能も備えています。夜間使用時のLEDライトがアームに内蔵されている点も特徴です。カラーリングはマットブラックとメタリックシルバーが予定されています。

DJI Osmo Pocketとの類似性とハンズフリー撮影

この機構はDJIのジンバルカメラ「Osmo Pocket 3」を彷彿とさせます。Osmo Pocket 3は1インチCMOSセンサーを搭載し、ブレない高画質動画を撮影できることで知られています。ROBOT PHONEは、この機能全体をスマートフォンに内蔵することで、外部ジンバルを持ち運ぶ手間を大幅に削減する可能性を秘めています。

ジンバル機構により、スマートフォンを操作せずに多様なアングルで撮影が可能となります。胸ポケットにスマホ本体を入れておき、カメラだけを外に出して首掛け撮影ができる「ポケットモード」にも対応しています。また、机の上に置いておくだけで、カメラが周囲を見回して撮影し、被写体の顔を自動で認識、トラッキングしてくれます。

2. AI戦略「ALPHA PLAN」と感情を持つカメラ

HONOR ROBOT PHONEは、AI、デザイン、持続可能性を柱としたHONORの長期AI戦略「HONOR ALPHA PLAN」を具現化するフラッグシップです。HONORは今後5年間で100億ドルをAI戦略に投じる計画を2025年3月に発表しています。

YOYO 2.0 AIエンジンによる多機能性

デバイスの心臓部はYOYO 2.0 AIエンジンであり、多言語対応し、カメラ入力からコンテキストを即座に理解するマルチモーダルインテリジェンスを搭載しています。

  • 感情的なコンパニオン ROBOT PHONEのカメラは、音声に反応して動き、カメラの動き自体で肯定(うなずき)や否定(首振り)のような表情を作り出すことができ、「感情的なコンパニオン」として位置づけられています。デモ動画では、スタイルアシスタント機能で自分の服装を写すと、今日の天気に合っていればカメラが上下に首を振る様子が示されました。
  • 感情認識と提案 顔分析による喜怒哀楽の検知が可能で、楽しい時は共有提案を、悲しい時は励ましのメッセージを自動生成する「感情インテリジェンス」を備えています。
  • パーソナライズされた実用例 カメラがユーザーの全身をスキャンし、クローゼットアプリと連携して最適なコーディネートを提案するデモも行われました。その他、フィットネスでの姿勢リアルタイム修正や、ビジネスでのビデオ会議における最適アングルの自動調整、参加者の表情分析と議論の要約機能なども想定されています。

ハードウェアとソフトウェアの基盤

ROBOT PHONEのAI処理チップにはSnapdragon 8 Gen 4相当が予想されており、専用のNPUがAIタスクを担います。オフライン動作率は90%と高く、遅延は20ms以内に抑えられます。OSはAndroid 15をベースとしたMagicOS 9ベースとなる見込みです。

3. カメラ性能とクリエイター市場への訴求力

ROBOT PHONEは、内蔵ジンバル機構によって、クリエイターやVlog撮影者に革命的な利便性をもたらすことが期待されています。

次世代イメージングの可能性

  • センサーとレンズ メインカメラは1インチ型センサーとf/1.4の大口径レンズを搭載する予定です。
  • 動画性能 ジンバル安定機構により、手ブレゼロの4K 120fps動画撮影が可能であり、プロ並みの滑らかさを実現すると期待されています。
  • 多角撮影 超広角120度、光学5倍の望遠レンズもアームに統合される予定です。AIシーン認識で夜景やポートレートを自動最適化し、360度パノラマをシームレスに合成します。
  • Vlogへの応用 Vlog作成において、アームがセカンドビューを提供し、同時多視点録画を可能にします。自動追尾機能により、一人でのvlog撮影がより自然で高品質になる可能性があります。

4. 実用性に関する課題と今後の見通し

HONOR ROBOT PHONEは高い革新性を備える一方で、可動機構を持つデバイスとして、実用性やプライバシーに関して議論を呼んでいます。

耐久性とバッテリーの懸念

  • 耐久性 可動部品の増加は、故障リスクの上昇と防水・防塵性能の低下につながる可能性があります。一部のユーザーからは、ジンバルは壊れる運命にあるという懐疑的な意見や、異物混入や落下時の破損リスクが指摘されています。
  • HONORの対策 HONORは、1.5mの落下耐性(MIL-STD-810H準拠)や、IP67防水等級、そしてモジュール交換を容易にすることで対応すると表明しています。
  • バッテリー消費 ジンバルの駆動、AIによる常時環境認識、カメラの自動追尾など、多くの要素が同時に動作するため、バッテリー消費が深刻な課題となる可能性があります。HONORは5000mAhのバッテリー容量を確保し、AI最適化によりモーター使用時も1日持ちを確保するとしています。

プライバシーと価格

  • プライバシーの側面 スマートフォンを手に持っていなくても、テーブルに置いておくだけで周囲を記録できるこのデバイスは、「監視デバイス」としての側面を持ちます。意図せず他者のプライバシーを侵害するリスクがあるため、倫理的な議論が必要とされています。
  • 価格と市場 ROBO PHONEの価格帯は、プレミアムクラスとなる1200ドル前後と予想されています。耐久性はMIL-STD-810Hに準拠し、競合の弱点とされるヒンジ耐久問題に対し、モジュール交換の容易さで差別化を図ります。

発売情報

HONOR ROBOT PHONEは2025年10月15日にティザー公開されましたが、実機と詳細なスペック、量産可否は、2026年3月にバルセロナで開催されるMWC 2026で世界初公開される予定です。グローバル市場への投入は2026年後半が予定されています。

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