今大注目の2つの高倍率ズームレンズ、TAMRONの「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2 (Model A075)」とSIGMAの「20-200mm F3.5-6.3 DG | Contemporary」は、それぞれ異なるコンセプトで「オールインワンズーム」の究極形を追求した製品です。
各レンズのコンセプト
TAMRON 25-200mm F2.8-5.6 G2は、先代モデルである28-200mm F2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)の後継機種「G2」として、創業75周年を記念して開発されました。広角端を28mmから25mmへと拡大しつつ、コンパクトなサイズ感を維持しています。最大の特徴は、広角端F2.8スタートという「明るさ」と、ハーフマクロに迫る近接性能(広角端1:1.9)の向上にあります。
一方、SIGMA 20-200mm F3.5-6.3 DG | Contemporaryは、「世界初」となる超広角20mmスタートの10倍ズームを実現したフルサイズ用高倍率ズームレンズです。この一本で超広角20mmから望遠200mmまでをカバーし、徹底した小型・軽量設計が特徴です。このレンズは、広角側の画角のインパクトと携行性、そして広範囲(28-85mm域)でのハーフマクロ撮影(1:2)に優位性を持っています。SIGMAはソニー Eマウント用とLマウント用をラインアップしています。
主要スペック比較
両レンズの主な仕様は以下の通りです。
| 項目 | TAMRON 25-200mm F2.8-5.6 Di III VXD G2 | SIGMA 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary |
|---|---|---|
| 焦点距離 | 25–200mm | 20–200mm |
| 開放F値 | F2.8–5.6 | F3.5–6.3 |
| 対応マウント | ソニー Eマウント用 | Lマウント、ソニー Eマウント |
| レンズ構成 | 14群18枚 | 14群18枚 |
| 絞り羽根枚数 | 9枚 (円形絞り) | 9枚 (円形絞り) |
| 最小絞り | F16–32 | F22–40 |
| 最短撮影距離 | WIDE: 0.16m / TELE: 0.8m | 28mm時: 16.5cm / WIDE: 25cm / TELE: 65cm |
| 最大撮影倍率 | WIDE: 1:1.9 / TELE: 1:3.9 | 1:2 (28–85mm時) |
| フィルター径 | φ67mm | φ72mm |
| 最大径 × 長さ | φ76.2mm × 121.5mm | Eマウント: φ77.2mm × 117.5mm |
| 質量 (Eマウント) | 575g | 540g |
焦点距離とF値の変化

このグラフは、TAMRON 25-200mm F2.8-5.6 Di III VXD G2 と SIGMA 20-200mm F3.5-6.3 DG Contemporary の開放F値が、焦点距離によってどのように変化するかを比較したものです。
まず全体の傾向として、TAMRONのほうが広角から望遠まで一貫して明るい設計になっています。広角端ではTAMRONがF2.8に対して、SIGMAはF3.5とすでに0.7段の差があり、中望遠域(50〜85mm付近)でもTAMRONがF4.0〜4.5を維持する一方で、SIGMAはF5.6〜6.3まで上昇します。そのため、TAMRONはズームしても比較的明るさを保ちやすく、被写体を背景から分離させたいポートレート撮影や、低照度環境での撮影に有利といえます。
一方で、SIGMAは焦点距離20mmから始まるため、TAMRONよりもわずかに広い画角を得られるのが特徴です。しかし、その分F値の上昇が早く、望遠側ではF6.3に達するため、被写界深度は深くなり、暗所ではISO感度を上げる必要が出てきます。
まとめると、TAMRONは「ズーム全域で明るく、描写の柔らかさやボケを重視した設計」、SIGMAは「広角域をカバーしつつ軽量・コンパクトさを優先した設計」という違いが見られます。撮影スタイルに応じて、明るさ重視ならTAMRON、広角重視ならSIGMAを選ぶのが適しています。
サイズ・重量・携行性の比較
携行性においては、SIGMAがわずかに優位です。Eマウント仕様で比較すると、SIGMAは540g、TAMRONは575gであり、SIGMAの方が35g軽量です。
長さもSIGMA(Eマウント用)が117.5mmであるのに対し、TAMRONは121.5mmであり、SIGMAの方がわずかにコンパクトです。SIGMAは、20-200mmという広範なズームレンジでありながら、わずか550g(Lマウント用)という徹底した小型軽量設計が特徴とされています。
また、フィルター径はTAMRONがφ67mmを採用しており、同社のフルサイズミラーレス用レンズの多くと共通化されているため、PLフィルターやNDフィルターなどのアクセサリーの共用が容易という利点があります。これに対し、SIGMAはφ72mmです。
近接撮影性能(マクロ)の比較
両レンズとも最大撮影倍率1:2(ハーフマクロ相当)の近接撮影に対応しており、小物や料理、花などのクローズアップ表現が可能です。
TAMRONは広角端25mmにおいて、最大撮影倍率1:1.9を実現します。最短撮影距離は0.16m(16cm)であり、被写体に非常に近づいた広角マクロ的な撮影が可能です。望遠端(200mm)での最大撮影倍率は1:3.9です。
一方、SIGMAは焦点距離28mmから85mmの広い範囲において、最大撮影倍率1:2(0.5倍)を実現しています。特に中望遠域でハーフマクロ撮影が可能なため、被写体から適度な距離を保ちつつクローズアップしたい場合に使い勝手が良く、この点がSIGMAの強みの一つです。最短撮影距離は28mm時で16.5cm、望遠端(200mm)で65cmです。広角端での最短撮影距離は25cmです。
AF性能とその他機能
AF駆動システムと静粛性
両レンズとも高速・高精度なリニアモーターをAF駆動に採用しています。
TAMRONはVXD(Voice-coil eXtreme-torque Drive)を採用しており、高速・高精度なAF性能に加え、静粛性にも優れています。VXDは立ち上がりの速さと静粛性が特長で、人物や動物の瞳AF、動画撮影との相性が良好です。このVXD搭載により、AF速度や動体への追従性も向上しています。
SIGMAはHLA(High-response Linear Actuator)を採用しており、優れた駆動精度を持つ高速AFで一瞬のシャッターチャンスを逃しません。静止画・動画ともに信頼性が高く、高速なフォーカス性能を提供します。
両レンズともレンズ内手ブレ補正機構(OS/VC)は非搭載です。手ブレ対策は、カメラボディ側の手ブレ補正機能(IBIS)に依存することになります。
共通規格とユーティリティ対応
TAMRON 25-200mm G2はTAMRON Lens Utilityに対応していることが公表されており、AF/MF切り替えなどの基本設定のカスタマイズが可能です。また、簡易防滴構造と、ゴーストやフレアを効果的に抑えるBBAR-G2コーティングが採用されています。
SIGMA 20-200mm F3.5-6.3 DGは、防塵防滴に配慮した構造に加え、レンズ最前面には撥水防汚コートが施されています。また、携帯時に自重によるズーム繰り出しを防ぐズームロックスイッチが搭載されており、広角端(20mm)でロックできます。
まとめ:選択のポイント
TAMRON 25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2とSIGMA 20-200mm F3.5-6.3 DGは、それぞれ異なるコンセプトで高倍率ズームの利便性を追求しています。
TAMRONを選ぶべき主なポイントは以下の通りです。
- 広角端F2.8スタートという明るさによる暗所性能やボケ表現の優位性。
- 広角端での圧倒的な近接性能(最大撮影倍率1:1.9、最短撮影距離0.16m)。
- φ67mmのフィルター径統一によるアクセサリー共用の利便性。
- 描写性能の向上を重視し、高画質を追求している点。
SIGMAを選ぶべき主なポイントは以下の通りです。
- 世界初の超広角20mmスタートという画角の広さ。
- 軽量設計(540g)とコンパクトさによる高い機動力。
- 焦点距離28-85mmという広い範囲でハーフマクロ(1:2)が可能な汎用性。
「超広角20mm」と「軽量性」か、あるいは「F2.8スタートの明るさ」と「近接性能の強み」かによって、ユーザーの用途に応じて判断が分かれるでしょう。




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